高齢者の借金問題~もしもの時の解決方法~

様々な要因で年金だけでは生活費や医療費が賄えず、
借金に頼らざる得ない状況から生じる「高齢者の借金問題」。
突然、介護が必要となった時に、借金が判明するというケースも増えてきています。
高齢者が借金を抱えてしまった場合どのような解決方法があるのでしょうか。
保田窪法律事務所の田上裕輝先生にお話をお聞きしました。

保田窪法律事務所 弁護士 田上 裕輝さん保田窪法律事務所
弁護士
田上 裕輝 さん

高齢者の借金問題~もしもの時の解決方法~

様々な要因で年金だけでは生活費や医療費が賄えず、借金に頼らざる得ない状況から生じる「高齢者の借金問題」。
突然、介護が必要となった時に、借金が判明するというケースも増えてきています。高齢者が借金を抱えてしまった場合どのような解決方法があるのでしょうか。保田窪法律事務所の田上裕輝先生にお話をお聞きしました。

保田窪法律事務所 弁護士 田上 裕輝さん
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田上 裕輝さん

高齢者でも債務整理はできるの?

高齢者の借金問題は、突然介護が必要となり家族が借金を知るケースや、高齢者と関わるケースワーカー、ヘルパー、ケアマネジャーなどの福祉従事者が異変に気づき、明らかになるケースがほとんどです。高齢者が以前からの借金を放置した結果、催促が来てどうしようもなくなり、家族や親族が弁護士事務所へ相談へ来るという例も少なくありません。高齢者は「自分だけで抱え込みやすい」場合が多く、借金問題を以前から抱えていたとしても周りは気づかずに、介護や入院など健康上の問題等が起きたタイミングで判明するケースが多いのです。

高齢者がこのような借金問題に直面した時にはどのような解決方法があるのでしょうか。一般的には、債務整理と言われる法律で認められた借金整理の方法を利用します。借金とは、クレジットカードや銀行のカードローン、消費者金融からの借入、ショッピング、携帯電話の未納料金や、車のローンなどの負債すべてを含みます。こうした借金の支払いが難しくなった場合の法的な救済措置が債務整理です。債務整理には「任意整理・個人再生・自己破産」といった方法があります。法律上、債務整理には、高齢を理由とした年齢制限もありません。ただし、任意整理・個人再生などの手続きを利用する際には、返済能力の有無が判断材料となるため、高齢者には利用が厳しくなる場合もあります。

次に、知っておいて欲しいのは「借金には時効がある」という点です。借金は最後の返済日から5年または10年で時効になることが多く、時効になった借金を、支払う、または認めてしまうと、その後の時効を主張したとしても、時効は認められなくなります。

例えば、高齢者の方が、消費者金融などから借入をしていて放置してしまい、長期間経過後「催促が来たから、慌てていくらか返済をしてしまった」または「消費者金融に連絡をしてしまい、借金を認めてしまった」というケースがこれに当てはまります。長期にわたる借金など「時効」が当てはまりそうな場合には、催告が来ても、すぐに認めたり、支払いをせずにまずは専門家ヘ相談しましょう。借金が時効になっていれば書面を債権者に送ると、消滅時効が発生し、借金の支払義務はなくなります。この手続きは、当事者本人でも出来ますし、弁護士に依頼することも可能です。

1人で悩まず、専門家に相談しよう

「任意整理」とは、簡単にいうと「業者との話し合い」です。話し合いなので柔軟に進められるというメリットがあります。「車は乗り続けたいが、特定のサラ金の借金は整理したい」といった場合には、車のローンは払い続け、サラ金など特定業者の借金のみを整理の対象にできます。ただし、「任意整理」では元金の減額ができない事が多いため、返済原資が確保できて返済計画が立てられる方に限られます。

「個人再生」は裁判所の手続きで、借金を減額しその減額した借金を返すという手続きです。個人再生は「借金そのものを減額できる」というメリットがあります。こちらも任意整理と同じく、減額した借金を分割で返済するため返済原資がある前提となります。住宅ローンには影響なく進められますので、自宅を残しながら負債を整理したい方には適しています。

「自己破産」は高齢者の債務整理の中で、一番多い手続きです。今ある財産で借金を清算し、残りは支払いを「なし」にできます。例えば借金が1,000万円、手元に200万円の財産がある場合、200万円で借金を支払い、手続きを踏めば残りの800万円は免責となります。手元の財産を持っていない場合は全額免責となり、借金を返済しないでゼロにする事が可能です。不動産も所有しておらず、預貯金も無い場合は破産をしても経済的なデメリットは無いと言えますが、持ち家がある方は家を手放すことになりますので、その後の住居に関して検討が必要です。車に関しては、5年以上経過していれば、財産とはみなされず、そのまま乗り続ける事もできます。

高齢者は年金暮らしの方が多く、これからの収入が見込めないため「自己破産」の手続きが一番多いのが現状です。高齢者が認知症を発症したため、初めて借金を家族が知ったというケースも増えています。借金の問題で悩んでいる高齢者、ご家族、支援者の方は、専門家に一度ご相談されることで解決の糸口が見つかることもあります。悩んだら、お近くの弁護士事務所や司法書士事務所、法テラスなどの専門機関などを活用しましょう。

債務整理」とは?

任意整理

最も多く利用されているのが任意整理。「利息・リボ手数料のカット」により、自分で返済するよりも支払額を減らせます。
(※元金の減額ができないことが多い)

1ヶ月の返済
10万円 → 5万円

このように任意整理で半分程度になることもあります。自宅や車、奨学金などに影響がないよう進められます。

個人再生

借金自体を最大で80~90%減らせるのが個人再生。任意整理よりも大きく借金を減らせます。

  • 裁判所ヘ申し立てが必要
  • 奨学金に影響があり
  • ローン返済中の車は失う
  • 官報に掲載される

などのデメリットはあります。住宅ローンには影響なく進められます。

自己破産

借金の支払いをなし(免責)にできるのが自己破産。
(税金や養育費などは免責されません)

  • 裁判所へ申し立てが必要
  • 奨学金に影響があり
  • 持ち家を失う
  • 20万円以上の財産は失う
  • 官報に掲載される

などのデメリットはあります。

取材協力
保田窪法律事務所
☎096-234-7740