ヒアリングフレイルってご存じですか?
早期発見で介護や認知症の予防を!

加齢や疾患によっておこる身体機能の低下で、心身が脆弱になった状態をフレイルといいます。その中で、高齢者の聴力低下がフレイルの要因の一つとなっていることに着目し、多角的に研究を進めているのが聴脳科学総合研究所所長の中石真一路さんです。「ヒアリングフレイル」の言葉の生みの親である中石先生に、聴力低下がもたらす心身への影響と、その予防と対策について話を伺いました。

聴脳科学総合研究所 所長 中石 真一路さん聴脳科学総合研究所 所長 中石 真一路さん
NPO法人日本ユニバーサル・サウンドデザイン協会理事長

ヒアリングフレイルって
ご存じですか?早期発見で
介護や認知症の予防を!

加齢や疾患によっておこる身体機能の低下で、心身が脆弱になった状態をフレイルといいます。その中で、高齢者の聴力低下がフレイルの要因の一つとなっていることに着目し、多角的に研究を進めているのが聴脳科学総合研究所所長の中石真一路さんです。「ヒアリングフレイル」の言葉の生みの親である中石先生に、聴力低下がもたらす心身への影響と、その予防と対策について話を伺いました。

聴脳科学総合研究所 所長 中石 真一路さん
聴脳科学総合研究所 所長
寺田 幹史さん
NPO法人日本ユニバーサル
・サウンドデザイン協会理事長

高齢者の聴力低下を放置すると
認知症や要介護へのリスクが高まる

ヒアリングフレイルとは、聴覚機能が低下して、人や社会とコミュニケーションがうまくとれず、心身にストレスを抱えたり生活機能が衰えたりする状態です。ヒアリングフレイルは、加齢や病気からくる身体機能の低下「フレイル」や認知症と間違われることも多く、本人も気づきにくいという傾向があります。

フレイルは完全に介護を必要とする状態ではなく、適切な生活改善や治療を行えば、快方に向かえる段階です。特にヒアリングフレイルは、聴力の低下という原因がはっきりしています。治療したり、あるいは聞こえにくい環境を改善させれば状態は良くなる可能性が高いのです。ヒアリングフレイルを放置しておくと、認知症やうつ状態、要介護のリスクが高まることもわかっています。私は聴力低下から起こるフレイルを多くの人に知ってもらおうと、4年前からヒアリングフレイルという呼称をつけて、その予防と対策を進めています。

加齢による聴力の衰えはいたしかたないものです。しかし、本人あるいは周りの人がより早く気づいて対処していけば、ヒアリングフレイルは予防でき、あるいは生活の質を落とさずに済むのです。しかし、高齢者の中には耳が聞こえにくくなると、そのことを相手に伝えなかったり、あるいは隠したりして、自ら人との会話を避ける傾向にあります。もし①最近話しかけても反応が少なくなった②テレビを見なくなった③家族との会話を避け、部屋にこもりがちになった④外出するのをいやがるようになった、などの状態が続いたら、ヒアリングフレイルを疑ってみてください。年だからしょうがないとあきらめるのではなく、耳鼻科での治療や補聴器、対話支援機器を使用するなど適切な対応をとってあげてください。本人とのコミュニケーションが取れるようになり、何よりも、本人が聞こえる、思いが伝わる、という人とつながる喜びを取り戻せると思います。

早期発見でスピーディな対策を!
簡単アプリで聴力の状態を知る

ヒアリングフレイル対策の課題として、難聴の早期発見の環境が整っていないということが挙げられます。聴覚検査は専門医やエキスパートがいて、設備が整った場所で行う必要があります。なので、これまで多くの高齢者の方のご相談を受けてきましたが、病院等に出向くのが億劫になって検査を受けないということがあるようです。さらに、自ら聞こえないのは年齢によるものでしかたがないと、諦めるケースも多く、治療や対策が遅れてしまうこともあります。そこでもっと気軽に、聞こえの状態を知ることができないかと研究を進め、開発に至ったのがスマホのアプリ「みんなの聴脳力チェック」です。これは、東京都立産業技術センター、九州大学病院耳鼻咽喉科等の協力・共同研究を経て、無料提供しています。実際に耳鼻科医や言語聴覚士はもちろん、介護福祉士など専門職以外の方も多数利用いただき高い評価を受けています。高齢者の方でも簡単にできるチェック方式です。まずは聴力がどの段階にあるのかを知って、予防や治療を行っていきましょう。

大きすぎる声でも言葉を聞きとれない
感音性難聴ってごぞんじですか?

中石さんが開発した対話支援システム「comuoon」。独自の特許技術でクリアな音、音の拡散による壁面反射を抑制することに成功。個人宅を始め、役所や病院、薬局、高齢者施設、店舗、学校など幅広く活用されています。中石さんが開発した対話支援システム「comuoon」。独自の特許技術でクリアな音、音の拡散による壁面反射を抑制することに成功。個人宅を始め、役所や病院、薬局、高齢者施設、店舗、学校など幅広く活用されています。

難聴の高齢者に対して、皆さんはどのように接していますか?大声を発して、何度も繰り返しても伝わらない会話に疲れていませんか?難聴にも種類があり、大きな声で言葉として聞き取れる「伝音声難聴」と大きな声でも言葉として聞き取ることが難しい「感音性難聴」の存在があります。

私が活動している『NPO法人日本ユニバーサル・サウンドデザイン協会』では、ヒアリングフレイルサポーター養成講座をオンラインで開催しています。高齢で聞こえにくくなった人や聴覚障害がある人との音声による対話を行う場合の「聴覚の基礎知識」と「対話支援技術」を学び、支援機器も活用しながら安心して対話できるための講座です。会話が難しくなったご両親のために参加される方、あるいは高齢者をサポートするケアマネジャー、看護師、介護職の方など多くの方が受講されています。家族や周りの方がヒアリングフレイルをより理解し、みんなで支えていくことが必要です。

これからますます高齢化は進み、高齢難聴者も増加します。認知症や介護予防の観点からも、難聴に関わる人々が難聴を正しく理解することが必要です。ひとりでも多くの人をヒアリングフレイルから救い出し、いくつになっても周りとつながる楽しみ、聞こえる喜びを分かち合いながら、誰も取り残されない社会になるよう活動を続けてまいります。

お問い合わせ・取材協力
聴脳科学総合研究所/NPO法人 日本ユニバーサル・サウンドデザイン協会
☎0120-033-553