コロナ禍における
高齢者のうつ病や認知症

長期に渡り私たちが直面することになったコロナ感染症の世界的パンデミック。
その中でうつ病や認知症など、高齢者のメンタルヘルスにも影響が及んでいます。
ワクチン接種も進み明るい兆しも見える今、これまでの現状と課題を専門家に聞きました。

医療法人松実会 よもぎクリニック副院長 精神保健指定医・認知症サポート医 松崎志保先生
医療法人松実会
よもぎクリニック副院長
精神保健指定医
認知症サポート医
松崎 志保 先生

コロナ禍における
高齢者のうつ病や認知症

長期に渡り私たちが直面することになったコロナ感染症の世界的パンデミック。その中でうつ病や認知症など、高齢者のメンタルヘルスにも影響が及んでいます。ワクチン接種も進み明るい兆しも見える今、これまでの現状と課題を専門家に聞きました。

医療法人松実会 よもぎクリニック副院長 精神保健指定医・認知症サポート医 松崎志保先生
医療法人松実会
よもぎクリニック副院長
精神保健指定医
認知症サポート医
松崎 志保先生

コロナ禍で見えた高齢者の変化

環境の変化は、在宅で過ごしていた人の方が大きかったのではないでしょうか。以前は地域のサロンや公民館講座などが開催されていましたが、2020年4月以降に一斉に閉鎖。それまで積極的に参加していた方でも生きがいや気持ちの張り合いを失ったことにより、不眠や不安感を訴えることが多くなりました。また軽い物忘れ程度だった場合でも、認知機能の低下が思っているよりも進行したケースがありました。地域の活動やデイサービスは、本来必要だったから利用していたはずで、それを制限されれば運動機能や認知機能が衰える可能性はやはり高くなったと言えるでしよう。

さらに介護施設に入居されている方も家族との面会制限が長期間になり、元気がなくなる・気持ちの張り合いがない・口数が少なくなる・食が細くなるなどの現象が見られました。心の状態は体の状態としても顕著に表れます。メンタルの落ち込みに伴い、運動機能が低下していく方も多くいました。

感染症に関わる具体的な不安とは

コロナ禍で
見られた
お悩み・不安
の例です。
  • 眼科に定期的に通院しているが、頻度が少なくなったことで視力を失うかもしれない
  • 通院の送迎をしてくれていた子どもがコロナになったら、病院に行けなくなる
  • なかなか孫が遊びに来られなくなり、楽しみが少なくなった
  • もし子どもがコロナ感染症で亡くなったら、自分の面倒は誰がみてくれるのか
  • 子どもたちのワクチン接種はいつだろうか?

よく聞いてみると、「自分がコロナ感染症にかかるかも…」という心配より、「家族がコロナ感染症になるかも」「そのことで自分の環境が変わるかも」という家族や周囲への不安が大きいように見受けられました。特にストレスが強い方はテレビの情報から強い影響を受けていることも。時にはそれらの情報源と少し距離を取ることも必要です。感染人数やワクチン接種の進捗状況などに一喜一憂せず、身体も気持ちも外に向けることを心掛けましょう。

適切な感染対策をしつつ
コミュニケーションの再開を

ほとんどの介護施設では、コロナ感染症に対する対策をきちんと行っています。定期的な外出や人との会話が、運動機能・認知機能の低下を防ぎますので、デイサービスなどの利用を再開してみてもいいでしょう。誰かに自分の気持ちを話したり不安を共有したりすることで安心感が生まれて良い睡眠が取れるようになり、心の安定に繋がります。一方、在宅で過ごす人は、家の中でできる趣味を見つけましょう。身体を動かすストレッチや体操のほか、頭を使う数独や簡単なパズル、切絵、今ならお孫さんに習ってコンピューターを使ったゲーム「e-スポーツ」などにチャレンジするのもいいかもしれません。

そして高齢者をサポートする介護従事者は、利用者の活動量が減っていることを踏まえた上で介護サービスの見直しを行い、イベントやリハビリなとで楽しみを増やす工夫を続けることが重要です。

コロナ禍はもうしばらく続くでしょう。高齢者には適切な感染対策を続けながら、活動的な毎日を過ごして欲しいと願っています。

取 材 協 力
医療法 松実会 よもぎクリニック
☎096-275-6088