早期対策で高齢運転者の
被害・加害を防ぐ
最優先すべき「命を守る」選択

一時期、テレビや新聞で連日のように報道された高齢運転者による交通死亡事故。
その悲惨な内容に、心を痛めた人も多くいたことと思います。
県の調べによると、県内の総免許人口のうち26%を高齢者が占めているそうです(平成30年時点)。
約4人に1人のドライバーが高齢者という現状で、交通事故を防ぐためにどういった対策が行われているのか、
熊本県警察本部交通部運転免許課の平島裕司警部に話を伺いました。

早期対策で高齢運転者の被害・加害を防ぐ

早期対策で高齢運転者の
被害・加害を防ぐ

最優先すべき「命を守る」選択
早期対策で高齢運転者の被害・加害を防ぐ

一時期、テレビや新聞で連日のように報道された高齢運転者による交通死亡事故。
その悲惨な内容に、心を痛めた人も多くいたことと思います。
県の調べによると、県内の総免許人口のうち26%を高齢者が占めているそうです(平成30年時点)。
約4人に1人のドライバーが高齢者という現状で、交通事故を防ぐためにどういった対策が行われているのか、熊本県警察本部交通部運転免許課の平島裕司警部に話を伺いました。

道路交通法の改正で
新設された検査・講習

 平成27年の道路交通法改正(平成29年3月12日から施行)では、「臨時認知機能検査制度の新設」「臨時高齢者講習制度の新設」「臨時適性検査制度の見直し(診断書提出命令の新設)」「臨時認知機能検査を受けない場合等の取消し等」「更新時の高齢者講習の高度化・合理化」が主に改正されました。これまで75歳以上の人が運転免許証を更新するとき(3年に1度)に行われていた認知機能検査を、75歳以上の人が一定の違反行為をした場合に「臨時認知機能検査」として受けるよう新設。
 さらに、その臨時認知機能検査を受け、認知機能の低下が運転に影響する恐れがあると判断された高齢者は、臨時高齢者講習(個別指導と実車指導)を受けなければなりません。また、臨時認知機能検査や更新時の認知機能検査で認知症のおそれがあると判断された場合は、臨時適性検査で医師の診断を受けるか、命令に従い主治医等の診断書の提出が必要になります。医師の診断の結果、認知症と判断された場合は、運転免許の取り消し等の対象になります。

こんな症状が出たら要注意!
  • 車のキーや免許証を探し回ることが増えた
  • 右左折時にウインカーを出し忘れることが増えた
  • いつも行っている場所への道順が
    すぐに思い出せないことが増えた
  • 車庫入れで壁やフェンスに車体をこすることが増えた
  • 駐車スペースに合わせて車を止めることが難しくなった
  • 急発進、急ブレーキ、急ハンドルなど運転が荒くなった
  • 車の汚れが気にならず、あまり洗車しなくなった
  • 洗車道具などをきれいに整理しなくなった
  • 好きだったドライブに行く回数が減った
  • 同乗者との会話をしながらの運転が難しくなった

※参考:鳥取大学医学部・浦上克哉教授著
「認知症の新基礎知識」(JAFメディアワークス刊)から

3つ以上の項目にチェックが入る人は運転適性相談をおすすめします。
車の運転に不安がある方やその家族の方は、下記の窓口にご相談を。専門の相談員が対応します。

運転適性相談窓口(運転免許センター)
菊池郡菊陽町大字辛川2655番地
熊本県運転免許センター2階

●免許更新に関する適性相談(運転免許課)
☎096-233-0110

●免許試験に関する適性相談(運転免許試験課)
☎096-233-0116

相談には看護師が対応し
専門的にアドバイス

 熊本県運転免許センターでは、運転に少しでも不安がある人やその家族を対象に、運転適性相談の窓口を設けています。事前に予約した日時に本人や家族と面談し、話し合いながら解決策を探っていきます。「高齢者や身体的な症状で運転に支障が出る可能性がある人でも、一切運転してはいけないというわけではありません。本人の命を守ることを一番に考え、夜間帯は運転を控えたり、運転する際は通り慣れた道を利用したりするなど、具体的な対策を話すこともあります」と平島さん。
 また、現在運転免許センターには看護師も配置。看護師は運転者の健康状態の確認をはじめ、運転適性相談にも同席します。「警察官の制服を着た担当職員が出ていくと、萎縮してしまい会話がうまくかみ合わないことがあります。看護師が同席することで、そういった心理的な負担を軽くし、運転の悩みを相談しやすい雰囲気をつくることも狙いです。場合によっては運転免許の自主返納を促すこともありますが、それ自体が目的ではないので、まずは心を開いて話してもらい、その悩みにどの程度の危険が予測できるかを理解してもらう必要があります」と話します。

運転適性相談では、看護師が同席して状況や症状を確認しアドバイスします
運転適性相談では、看護師が同席して
状況や症状を確認しアドバイスします

運転免許の自主返納で
受けられるサービスも

 運転免許を自主返納した高齢者に対し、民間業者が行っている支援やサポートがあります。例えば、県内6交通事業所が共同して行っているのが「免許返納者割引乗車証」の交付です。県内に住んでいる65歳以上の方で、運転免許証を自主返納し、「申請による運転免許の取り消し通知書」または「運転経歴証明書」の交付された方を対象に、県内全域の一般路線バス、熊本電気鉄道と熊本市交通局が運航している電車が、普通旅客運賃の半額で乗車できます(10円未満切り上げ、その他詳細は各事業所))。「申請による運転免許の取り消し通知書」「運転経歴証明書」については、運転免許センターまたは最寄りの警察署にお問い合わせください。また、タクシー事業者の割引や市町村で支援事業等を行っている自治体、各地区の交通安全協会等のサポートもあるので、お住まいの地域で受けられるサービスを確認してみてください。
 高齢運転者のために各種制度が整えられてきましたが、まずは自分の運転について見つめ直し、“命を大切にする”ということを考えた選択をすることが重要です。

運転免許を自主返納する選択肢もあります
運転免許を自主返納する選択肢もあります
取 材 協 力
熊本県警察本部交通部運転免許課
☎096-233-0110